どうも、武器商人(@BukiDartsBot)です。
ダーツのバレルを選ぶ際によく耳にする「タングステン」について説明します。

難しい説明はいくらでもできますが、できるだけ簡単でシンプルに、そしてダーツに関係する内容に絞ってまとめます。
タングステンとは?
タングステン(tungsten)は、スウェーデン語で「重い石」を意味する金属で、元素記号はWです。
金属の中でも非常に密度が高く、鉄のおよそ2.5倍の比重を持ちます。
ダーツとの関連性が高いタングステンの主な特徴を挙げると、以下のようになります。
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非常に硬く耐久性があり、重い金属である
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比重が高いため、同じ重さでも細く(小さく)できる
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加工が難しく加工コストが高め
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世界のタングステン生産量の大部分を中国が占めている(=価格変動が起こりやすい)
タングステンを使ったバレルは、
「細いのに重い」「ぶれにくい」「形状を自由に設計しやすい」といった利点から、
現在のソフトダーツでは最も一般的な素材になっています。
ここまで見てきたように、タングステンは「重くて硬い・細く設計しやすい」という性質を持ちます。
では、数ある金属の中で なぜダーツのバレルにはタングステンが選ばれてきたのか?
次の項目では、その理由をダーツ特有の事情と合わせて解説していきます。
ダーツのバレルにタングステンが使われるのはなぜか?
ダーツのバレルには、タングステン以外にも「真鍮(ブラス)」や「ステンレス」が使われることがありますが、現在のソフトダーツでは圧倒的にタングステン製が主流です。
その理由は、タングステンが持つ「硬さ(耐久性)」と「重さ(高密度)」の2つが、ダーツという競技の性質と非常に相性が良いからです。
① 硬くて削れにくい → 長期間使える
ダーツは244cm先の的に向かって金属製の矢を投げる競技です。そのため、プレイ中にはバレル同士の衝突が頻繁に起こり、衝撃でバレルが傷つくことがあります。
真鍮やステンレスのような柔らかい金属の場合、この衝撃で削れたりしやすいという欠点があります。
タングステンも完全に削れないわけではありませんが、非常に高い硬度と耐久性を持っているため、形状が崩れにくく長期間投げてもそれほど劣化しないという強みがあります。
② 高密度 → 細くて重いバレルを作れる
ダーツでは、バレルの「細さ」が大きな武器になります。太いバレルはグルーピング時に的を塞ぎやすく、弾かれるリスクも増えてしまいます。
しかし、真鍮やステンレスは密度が低いため、一定の重さを確保しようとするとどうしても太くなります。
一方、タングステンは鉄の約2.5倍の比重があるため、
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同じ形状でも重くできる
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同じ重さでも細くできる
という、ダーツにとって理想的な設計が可能になります。
③ 結論:タングステンは「耐久性」と「設計自由度」が最も高い素材
このように、
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衝撃に強く、長く使える
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細さと重さを両立できる
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設計の自由度が高い
という理由から、ダーツのバレルにはタングステンが最適な素材として選ばれているのです。
タングステン80%、90%、95%の違いは?
タングステンバレルの「80%」「90%」「95%」という数字は、
素材中のタングステン含有率(純度の割合) を表しています。
この比率の違いは、
バレルの「細さ」「重さ」「耐久性」「価格」「加工難度」に直結し、
さらに ダーツ文化の歴史にも深く関わっています。
ここでは、素材特性の違いだけでなく、
「なぜ90%が長い間“黄金比”だったのか?」
「なぜ80%や95%が増えてきたのか?」
といった 文化的背景 も踏まえて解説します。
① タングステン90%は“長年の定番”として君臨してきた
ダーツ業界では、長い間
「タングステン90%=標準」「黄金比」
という位置づけが続いてきました。
その理由はとても明確です。
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95%より加工がしやすい(=コストを抑えられる)
※そもそも昔は95%で加工するには高度な技術が必要だった。 -
80%より細くできる(=グルーピングに有利)
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耐久性が非常に高く、長く使える
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価格・性能・加工難度のバランスが抜群だった
つまり、
「コスパ・耐久性・加工性・性能」すべてのバランスが最も整っていたのが90%
ということです。
このため、プロモデルも一般向けモデルも
ほとんどが90%中心でラインナップされていた時代が長く続きました。
② 80%は「廉価版」から「再評価される素材」へ
ダーツバレルの価格は近年上昇していますが、それ以前からタングステン90%はやや高価なイメージがありました。
これに対し、80%タングステンは価格を抑えやすく、エントリーモデルでは80%が採用されることが多かった背景があります。
さらに現在では、タングステン原価が高騰していることもあり、
価格を下げるために80%を採用するケースが再び増えてきました。
加えて、バレルのトレンドの変化も80%の再評価に影響しています。
一時期、長めのストレートバレルが流行り、今でも全体的にバレルの平均的な長さは伸びています。
しかし、長いバレルをタングステン90%で作ると、
前後の削りを大きくしないと重くなりすぎてしまう ことがありました。
そのため、一定以上の長さのバレルを設計するときに、
あえて80%を採用するメーカーも増えてきた という流れがあります。
また、80%はただの“安価な素材”ではありません。
上級者の中にも80%特有の投げ心地を好む人は普通にいます。
90%よりわずかに太めになることで、グリップしたときの安心感や、手にしっくりくる太さ が得られるためです。
タングステン95%の存在価値
ソフトダーツのバレルには、競技ルール上の重量制限があります。
セッティング込みでおよそ25gが上限とされており、
バレル単体では 最大でも約23g程度が限界 になります。
長さや太さにも規定はありますが、
よほど極端な形状でなければ大半のバレルはその範囲に収まります。
したがって、設計上で最も重要なのは
「バレルを23g以内に収めること」 になります。
例えば、長さ50.8mm・最大径7.0mmの細長いバレルを考えてみてください。
このサイズであれば、タングステン90%で問題なく作ることができます。
もし重量がオーバーする場合でも、
ネジ部分を深く削るなどの加工で調整が可能 です。
しかしここに矛盾が生じます。
タングステン比率を95%に引き上げれば、当然ながらバレルは重くなります。
ところが競技ルールで重さの上限が決まっているため、
結局は 削って軽くする必要が出てくる のです。
つまり、
「重くするために95%にする」 → 「重すぎるので削って軽くする」
という、素材の利点を自ら相殺してしまう状況が生まれます。
こうした点を総合的に見ると、
タングステン比率を95%にするメリットは正直ほとんどありません。
95%でなければ実現できない極端な細さや特殊形状があるのなら別ですが、
現実にはそういったシビアな設計を見かけることは稀です。
さらに、95%は
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加工が難しくコストが高い
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割れやすく強度も落ちやすい
といったデメリットも抱えています。
よほど明確な理由がない限り、
タングステン95%を採用する必要性は低いのではないか
と考えています。
タングステン比率が同じなのにグラムの違うバレル
ダーツは非常に繊細なスポーツであり、1gや2gの違いでも投げ心地が大きく変わります。
そのため、同じ形状のまま重さだけを変えたバレルが販売されることは珍しくありません。
しかし、重さを変えるための方法は限られています。
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バレル全体の形状を小さくする
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ネジ部分(シャフト側)を深く削って軽くする
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タングステン比率を下げて軽くする
多くのユーザーは形状が変わることを嫌うため、
現実的には ネジ部分を深く削ることで軽量化する方法 が主流です。
形を変えずに軽量化すると起こる問題:重心位置がズレる
ここで問題になるのが 重心位置です。
ネジ部分を削ると、その分だけ前後の重量バランスが変わり、
同じ形でも重心が微妙にズレてしまう という問題が発生します。
センター重心のバレルであっても、
前後の削り量がわずかに変わるだけで重心は中央寄りになり、
後ろ持ちのプレイヤーは特に違和感を覚えやすくなります。
また、シャフト・フライト・ティップのセッティングによっても
全体のバランスは変わるため、
わずかな重心のズレが投げ心地として表面化する こともあります。
ここで登場するのが「タングステン比率を変える」という発想
実はこの問題を根本的に解決する方法があります。
それが、
「タングステン比率を変えて、同じ形状・同じバランスのまま重さだけを変える」
というアプローチです。
タングステン比率が高いほど密度が上がり、
同じ形でもより重く作れます。
逆に比率を下げれば、同じ形でも軽くなります。
つまり、
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形は全く同じ
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カットも重心設計もそのまま
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投げ心地(バランス)も変えない
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重さだけを変えられる
という “理想的な重さ違い展開”が可能になる わけです。
これにより、
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技術習得のため軽いモデルを選ぶ
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安定性重視で少し重いモデルを選ぶ
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同じ形状で感覚を変えずに重量だけ調整したい
といった細かなニーズに応えられるようになり、
近年はこの“比率違いのラインナップ”を採用するメーカーも増えてきました。
ダーツバレルの価格が高騰する理由:タングステン高騰 × 推し活需要 × 機能的価値の三重構造

重心を測る便利なダーツグッズ
タングステン比率による重量や重心の変化は、実際に触ってみないと分かりづらい部分でもあります。
もし、自分のバレルの重心位置を正確に知りたい方は、以下のレビュー記事も参考にしてください。
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