タタカウヒトハウツクシイ | PERFECT2025最終戦を観戦してきて

タタカウヒトハウツクシイ。

ソフトダーツプレイヤーの頂点を決める、初の全国トーナメント
burn.のキャッチコピーとして知られている言葉です。

日本初のソフトダーツプロツアーであるPERFECTが始まったのは2007年。
burn.はそれに先立つこと2年、2005年に初開催されました。

すでに20年以上が経過していますが、
いまなお語り草になるほど、この言葉は多くの人の記憶に残っています。

なんと美しい日本語だろうか、と素直に思ってしまいました。

さて、2023年、2024年、2025年と、
僕はPERFECTの最終戦を3年連続で現地観戦しています。

宮城県在住の僕にとって、最終戦の開催地は決して近くありません。
交通費だけでも往復でおよそ25,000円ほどかかり、
日帰りは現実的ではないため、宿泊費を含めるとさらに出費は増えます。

オンライン中継でも十分に盛り上がりを見せるPERFECTですが、
現地で体感するあの熱狂は、どうしても代えがたいものがあります。

あの感覚、あの感動を言語化するのは、正直とても難しい。

けれど、最終戦の会場にいて、
選手の表情や背中を見ていると、
どうしてもこの言葉が頭に浮かんでしまう。

タタカウヒトハウツクシイ。

理由をうまく説明できるわけじゃないですが、
まさに、それなんじゃないかと思ってしまうのです。

泣いても笑っても

よく、「泣いても笑っても最後の試合」という言い方をすることがあります。

PERFECTのツアーは、今年(2025年)は全23戦。
その中でも、この最終戦は、他の試合とは明らかに気持ちの乗り方が違います。

ランキングがかかっている選手にとっては、年間順位が確定する試合。
今年の目標を掲げて戦ってきた選手にとっては、
その目標を達成するための、最後の舞台でもあります。

今年のPERFECT最終戦は、
男子774名、女子156名と、例年にも増した人数で行われました。

PERFECTの試合は、予選ロビンからトーナメントまでを
すべて1日で決める、非常に過酷な試合フォーマットです。

誰もが自分の目標を達成できるわけではなく、
なおかつ最終的には、男女それぞれ一人しか優勝できません。

ほとんどの人が悔しい思いをするトーナメントです。

それでも、戦いの場を求めて集まる選手は年々増え、
会場は熱量にあふれ活気があります。

僕は、あの熱気に満ちた空気が、どうしても好きなのです。
だから、最終戦は現地で観たいと思っています。

試合観戦のみの個人行動

僕は基本的に、観戦のみで会場に行っています。

日頃からXやスペース配信で全国の方々と交流していると、
試合後に「ご飯でもどうですか」と声をかけていただいたり、
最終戦と併設されている一般大会に出ないか、
というお誘いを受けることもあります。

ただ、僕はあまり予定を詰め過ぎず、
基本的には個人行動で過ごしています。
理由はひとつで、決勝まで、最後まで観たいからです。

実際、2024年の最終戦決勝は、
終了したのが23時近くになっていました。
システムトラブルなどもあり、想定以上の長丁場でした。

それでも、
あの時間まで会場に残っていてよかったと、
今でもはっきりと思います。

参考までに、2024年の投稿を貼っておきます。

みなとみらい付近を歩いている、42歳の男性。
それが、僕です(笑)。

ダーツを知らない人からすれば、
そんな場所で、これほどの激戦が繰り広げられているなんて、
きっと想像もしていないんだろうな、
と思いながら写真を撮っていました。

2025年最終戦の見どころ

PERFECT2025年シーズンの最大の見どころは、
なんといっても男子の年間優勝をかけた戦いでした。

女子は、大城明香利プロ
圧倒的な成績で、すでに年間チャンピオンを確定させていましたが、
男子は最終戦まで、まったく気の抜けない展開が続きました。

シーズン序盤は、
ヒューゴ・リョン選手
このまま独走するのではないか、と思わせるほどの勢いを見せていました。
しかし、シーズン中盤以降はやや失速し、
年間タイトル争いは混戦模様へと変わっていきます。

ヒューゴ・リョン選手といえば、
2024年終盤からPERFECTに参戦し、
圧巻のパフォーマンスで一気に存在感を示した選手です。
僕自身、今年の試合会場でも何度かその姿を目にしてきました。

実は以前、僕のブログでもヒューゴ選手について記事を書き、
「年間チャンピオンの可能性も十分にある」と触れていました。

結果として、その予想どおり、
彼はシーズン終盤まで、年間チャンピオン争いのランキング1位に居続けました。

(参考記事)

香港出身のHugo Leung(ヒューゴ-リョン)がPERFECTを2連覇 | 圧倒的な強さで今後のPERFECTを無双するか?
どうも、武器商人(@BukiDartsBot)です。2021年、PERFECTの看板選手が次々とJAPANへ移籍して以降、少し盛り上がりに欠けるPERFECT。2024年も終盤に差し掛かり、非常に面白い選手が参戦しました。参考記事)【ダーツ移籍2021】PERFECTの看板選手が...

ヒューゴ・リョン選手は、
香港ツアーを勝ち抜き、SUPER DARTSにも参戦
さらにPDC World Darts Championshipにも出場し、
今年は世界を転戦する、非常にハードなスケジュールをこなしていました。

そのスケジュールの影響もあり、
ヒューゴ・リョン選手は、PERFECTでは他の選手と比べて参戦数が少なめでした。
また、シーズン終盤にかけては、
やや失速したようにも見えました。

ただ、SUPER DARTS 2025の総括投稿を読む限り、
そこには単なるコンディションの問題だけではない、
トップ選手ならではの葛藤があったことがうかがえます。

ヒューゴ選手自身が、
「勝ちたい」という気持ちが、
いつの間にか「負けたくない」に変わってしまっていた、
と吐露していたのが、とても印象的でした。

勝ち続ける立場になった者にしか分からない重圧。
期待される側に回ったからこそ生まれる迷い。
その苦悩も含めて、
今年のヒューゴ・リョン選手のシーズンだったのだと思います。

(参考投稿)

また、年間チャンピオンを追いかける側の争いも非常にシビアで、
最終戦に向けた選手インタビューも印象的でした。

その中でも、ひときわ強い言葉を残していたのが、
年間ランキング2位の羽角英明選手です。

「1位と2位の間には大きな差がある。
2位、3位、4位は一緒。そこは意識していない。」

2位を守るつもりはまったくなく、
年間チャンピオンだけを見据えた発言でした。

(参考投稿)

結果としては、
羽角英明選手
年間チャンピオンを意地で奪い取った、
そんな表現がしっくりくる最終戦でした。

最終戦の現場で生で観れて良かった試合でした。

去る選手もいれば、新たに挑戦する選手もいる

PERFECTのライセンスは、
一度取得すれば、更新さえしていれば失効するものではありません。
ペナルティがない限り、年齢によって出場を制限されることもありません。

実際、PERFECTにはover45(45歳以上)ランキングが存在しており、
それを見ても分かるように、
非常に幅広い年齢層の選手が、同じ舞台で戦っています。

選手本人に参戦する意思がある限り、
戦い続けることができる。
そこは、プロダーツトーナメントの大きな魅力のひとつだと思います。

ただし一方で、
プロスポーツ選手である以上、
常に「引退」という選択肢と隣り合わせでもあります。

近年は参戦者数も増え、
競争はますます熾烈になっています。
その流れの中で、
区切りをつけ、引退を選ぶ選手がいるのもまた事実です。

そして同時に、
この最終戦という場で、
新たにPEREFCTに参戦する選手もいます。

今回は、松尾美歩選手が気になり、
現地で突撃レポをしてきました。

デビュー戦にもかかわらず、
いきなり中継台の“鬼ロビン”。
この引きの強さは、正直「持っている」と言わざるを得ません。

まだ若い選手ですが、
雰囲気や立ち振る舞いは落ち着いていて、
初舞台とは思えないほどでした。

ダーツの競技人生は、きっと長いものになると思います。
この時点で評価や判断はできませんが、
何年後かが楽しみだと思える。
それだけで、十分なのかもしれません。

これだけ多くの選手がいる中で、
「少し話してみたいな」と思う選手は、そう多くありません。
だからこそ、何かしら感じるものがあったのだと思います。

また、SNSやスペースで何度かやり取りしたことはありましたが、
現地観戦で得られる情報の解像度は、やはり段違いでした。
画面越しでは分からない部分も含めて、
得られるものが多かったように感じます。

思い返せば、
去年、年間チャンピオンを獲得した阿部悠太郎選手に
初めて突撃レポをしたのも、
そのおよそ6年前のことでした。

それでも、6年で結果が出れば早いほうで、
結果を残せないまま競技人生を終える選手も、決して少なくありません。

だからこそ、
何年後かを想像して、少し楽しみに思える選手がいるというのは、
とても素晴らしいことだと思います。

僕は、50歳になっても、
パシフィコ横浜に足を運んでいるんでしょうかね(笑)。

東北の選手の応援

いきなり地元トークになってしまって、すみません。

ただ、宮城から横浜まで足を運んで観戦するとなると、
どうしても地元・宮城の選手や、東北の選手の成績が気になってしまいます。

僕自身も観戦に行くのは決して楽ではありませんでしたが、
参戦している選手たちは、それ以上に時間もお金も体力も使っているはずです。
だからこそ、せめて地元選手の応援だけは、しっかりしたいといつも思っています。

2023年の最終戦では、
宮城の 阿部悠太郎選手 が決勝まで進み、
惜しくも敗れて準優勝となりました。

2024年の最終戦では、
同じく阿部悠太郎選手が3位タイに入り、
年間チャンピオンが決定する瞬間にも立ち会うことができました。

そして今年、
個人的にもっとも印象に残ったのが、
山形の 沼倉真理子選手 の決勝進出です。

沼倉選手は、もともと実力のある選手でしたが、
2022年のチャレンジトーナメントで優勝し、
翌年の施設利用分担金・全戦分を獲得。
そこから、ほぼフル参戦を続けています。

2023年の受賞式でも、そのことについて触れていましたね。
とても印象に残る、良いスピーチでした。

年齢は決して若いわけではありませんが(悪い意味ではなく)、
僕自身と年齢が近いこともあり、
勝手ながら親近感を覚える部分がありました。
その分、今年の決勝戦は感情が入りました。

結果として優勝したのは、
文山雪華プロ
史上最年少優勝という記録もあり、
若く、人気のある選手です。

会場の雰囲気も、
正直なところ文山プロへの声援が多かったと思います。
そんなアウェイとも言える環境の中で、
沼倉選手の戦いぶりは、とても印象に残りました。

表彰式のあと、少しだけ言葉を交わせたのも、
個人的にはうれしい出来事でした。

まとめ

ダーツの試合ルール自体は、とてもシンプルです。
ですが、一人ひとりの参戦環境や、そこに至るまでのストーリーを見ていくと、
これほど見どころの多い競技も、そう多くないと感じます。

特にそれを強く思うのが、
PERFECTの最終戦です。

僕は、
2023年、2024年、2025年と、現地でその場に立ち会ってきました。

配信では伝わらない空気。
勝ち負けだけでは測れない、挑戦する姿。

あの感覚を、
きれいな言葉で説明するのは正直難しいのですが、
それでも思ってしまいます。

タタカウヒトハウツクシイ。
まさに、それなんじゃないかと。

最近のダーツ業界は、
エンターテインメント性が強まり、
人気を前提とした商売になりがちな側面もあります。

けれど、
どんなに楽しいイベントよりも、
大会でしか得られない価値が間違いなくあって、
それをどうしても伝えたいと思いました。