James Wade(ジェイムズ・ウェイド)謝罪に対して一部否定的な意見が見られた件

欧米的な価値観と日本人的な価値観の相違について観察しました。また、ADHDについても多少取り上げました。

擁護する意図はありませんが、少しでも理解が深まればと期待して書いています。

ijmaki / Pixabay

公式謝罪文

以下、PDC公式の和訳です。

昨夜の自分の行動についてこの場をお借りして心よりお詫び申し上げます。 浅田斉吾プロは偉大なプレーヤーであり、彼およびファンの皆様、PDCに対し謝罪申し上げます。 私のプロフェッショナルでの経験をご存知の方は私の不徳の部分をご存知でしょうが、私がステージ上と試合後のインタビューでとった態度にはとても反省しております。 私はステージ内外に関わらず時折躁鬱症状が起こり、自身で闘っており、誰から非難されるより自虐の念に悩まされております。 再度謝罪申し上げると共に、良心の呵責の念に悩み後悔していることご理解頂けますようお願いいたします。
ジェームス・ウェードからの謝罪文 | 【SMAG. | S-DARTS Magazine】ダーツ好きなあなたを刺激するWEB MAGAZINE

日本のファンの目にはどう映ったか?

全部の意見は拾い切れておりませんが、個人的に思ったことを書きます。

第三者として僕が意見を書くことはおこがましいです。

彼およびファンの皆様、PDCに対し謝罪申し上げます。

と言っており、当事者でも無く、とりわけ浅田斉吾プロの大ファンというわけではなく、どちらかというと「にわか」なファンです。

しかし、思う部分があったので、一意見として書かせていただきます。

まず、日本では、

  • 言い訳がましかった
  • 印象が良く無かった

という意見が少なくありませんでした。

悪く言えば、躁うつ病を言い訳とした責任逃れ的な発言に見えたのではないか?と。

謝罪の意味

James Wadeは謝罪をしたわけですが、そもそも謝罪とは何であるか、深く考えさせられます。

欧米人と日本人の文化人類学的考察を行った「菊と刀」という書籍が非常に印象に残っております。

それによれば、

  • 西洋は内的な良心を意識する「罪の文化」
  • 日本は外的な批判を意識する「恥の文化」

と分類されております。

日本人にも欧米的な考えをする人が多くなったらしいですが、現在のこの状況にも当てはまるんではないかと僕は思います。

そもそも、日本人に「罪」という概念は希薄なんで、間違いのもとです。「James Wadeよ恥を知れ!」的な批判をしたところで、理解しあえないと思います。

Apologize=謝罪と翻訳しても解決しないと思うので、Apologizeの意味を英英辞典で引いてみます。

to tell someone that you are sorry that you have done something wrong
apologize | ロングマン現代英英辞典でのapologizeの意味 | LDOCE

簡単に言いますと、

自分が行った誤ちに対して申し訳ないと思う旨を誰かに伝える行為です。

あくまで、自分が悪いと思ったことを伝える行為であって、相手方に許しを貰う行為ではありません。もちろん、相手方に好印象を与えるにこしたことはありませんが、それは二次的なものであって最終的な目標ではありません。

欧米的な発想では、自分の非を認めるにあたって、理由も言わずに結論だけを言うということはまずありません。だからこそ、彼は、事実として病気のことを伝えなければならないと思ったのではないか?彼にとって、日本人は馴染みのない国民・人種だったと思いますし、それゆえしっかりとした説明付けが必要と判断したのではないかと思います。

James Wadeが躁うつ病であることを既に知っている方も多かったですが、彼が未知の日本人に対して、それを既知の事実であるかのように発言することは、有り得ません。これは、彼のstatement(公の場での意見)なのですから。

彼の謝罪の後、John Loweもツイートしておりました。

昨夜の事件とそれに続くインタビューの後のJames Wadeの声明を読んだ。彼は正しいことをし、Asadaと彼の行動と発言を目撃したすべての人に謝罪した。彼の言う言葉すべて本気で言っていると思うし、君の誠実さに対してよくやったと自信を持って言えるよ。
これを読んでもやはり、相手の印象云々ではなく、本人が謝罪したという事実を評価しているように見えます。

後悔について

少しだけ気になったので書きます。

James Wadeは最後に、重ね重ね謝罪をしたのち、ものすごく後悔していると打ち明けております。

後悔先に立たずという言葉もありますし、後悔するならやるなという意見もあるかもしれません。そして、彼のインタビューを見ると、配慮に欠けるような言動をしているように見えなくもない。

彼は、ADHDである旨カミングアウトしておりますが、その一つの症状に、「他者の感情を読み取るのが苦手」というものがあります。他者がどう思うかを想像することが難しいんです。それゆえ、空気の読めない発言をしてしまうことが多々あるのだと思います。

ましては、躁状態で、すごく気分が高ぶっていたため、なおさら感情任せに発言してしまったのではないかと思います。

2017年の英ガーディアン紙の記事を読みましたが、彼には昔からそういった傾向があり、教師は彼をバカだとか問題児として扱ったそうです。そのことは、彼にとってトラウマになっており、今まさに彼はそこに向き合っている最中だと思います。

確かに、印象は良くうつらなかったかもしれませんが、彼の不器用だけれども誠実な姿は、個人的に好感持っています。

今回のことだけで判断せず、見守って行きたいと思います。