ダーツの大会(ハウストーナメント含む)の賞金についての法規制 | 風営法、景品表示法、刑法との関連

はじめに

ハウストーナメント後のTLを見ると、明らかに現金の入ったのし袋と思われる写真が流れて来ます。

そして、掲示板などで、賭博云々と書かれていることがあります。

実際のところどうなんでしょう?

賞金を禁止する3つの規制

  • 風営法23条
  • 景品表示法
  • 刑法185条(賭博罪)

上から順番に検証していき、見解を示します。

注意点ですが、あくまで当方見解であり、最終的な判断は、司法機関です。

前提として罪刑法定主義

ある行為を犯罪として処罰するためには、立法府が制定する法令において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則のことをいう。
罪刑法定主義 – Wikipedia

簡単に言うと、処罰するルールが無ければ処罰されません。処罰されるにしろ、法律(条例含む)に規定されている罰則以上の処罰は行われません。

例えば、麻薬を所持していても死刑にはなったりはしません。

従って、どの法律によってどういった規制されているか、検証するに意味はあります。

武器商人@ダーツ
武器商人@ダーツ

「何となく警察に言われそうだからやめておこう」と自粛するのはもったいないです。

風営法23条

(遊技場営業者の禁止行為) 第二三条 第二条第一項第七号の営業(ぱちんこ屋その他政令で定めるものに限る。)を営む者は、前条の規定によるほか、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 現金又は有価証券を賞品として提供すること。
二 客に提供した賞品を買い取ること。
三 遊技の用に供する玉、メダルその他これらに類する物(次号において「遊技球等」という。)を客に営業所外に持ち出させること。
四 遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること。
2 第二条第一項第七号のまあじやん屋又は同項第八号の営業を営む者は、前条の規定によるほか、その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない。
3 第一項第三号及び第四号の規定は、第二条第一項第八号の営業を営む者について準用する。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律,(略)風営法,風適法,風俗営業法,風俗営業適正化法,風営適正化法

この点は、2018年9月25日で、デジタルダーツの扱いが変更されておりますので、営業形態によっては扱いが異なります。

風営法の適用を受けない店舗であれば、考慮不要です。
しかし、深夜酒類提供飲食店営業に該当するなど、風営法の適用を受ける場合は、依然として当規制を受けます。その場合、賞金はNGです。
届出ていない場合も(無許可営業)、風営法2条に記載されている営業の場合は、風営法の規制を受けますので、注意が必要です。
もっとも、遊戯用のメダルを商品として与えることは禁止されておりません。割引券など、そういった類もOKです。(メダルの買取りなど行うのはNGですが。。)

景品表示法

抵触すると考えられている箇所は以下です。

商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供することを「懸賞」といい、共同懸賞以外のものは、「一般懸賞」と呼ばれています。

一般懸賞における景品類の限度額は、表のとおりです。

もともと、

  • 景品の価格と比較し高額な懸賞が提供される
  • じゃんけんなど偶然性の強い行為によって決められる

ということが、公正な取引を妨げられると考えられたため、規制されると解釈しております。

「ダーツ」という競技によって懸賞が決定されるのであれば、抵触の可能性は低いと思われるかもしれません。

しかし、オートハンデや、ランダム抽選でプロと組めるなど、誰でも優勝出来る可能性があると判断されればそれまでなので、注意は必要です。

ただし、景品規制の概要で、懸賞の上限額が10万と記載されているので、これを超えない限り問題ありません。ハウストーナメントの規模でしたら問題無さそうですね。

PDJのように、景表法の景品の定義に当てはまらない賞金トーナメントは、規制は受けません。また、景表法に関しては消費者庁の事前相談を受けることが可能なので、大規模な賞金トーナメントを開催される場合は、事前相談が活用されることが多いようです。e-sportsでもよく活用されている制度です。

刑法185条の賭博罪

根拠条文は刑法185条

賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
刑法第185条 – Wikibooks

武器商人@ダーツ

武器商人@ダーツ

これだけだと何が賭博罪なのかさっぱりわかりませんね。具体的に賭博罪に当たるかどうかの要件を、成立要件と言ったりします。

賭博罪の保護法益

むやみやたらに、国民の自由を制限しないのが法の支配の原則です。制限する保護法益というものが必ず存在します。賭博罪の場合は以下です。

判例・通説は、公序良俗、すなわち健全な経済活動及び勤労への影響と、副次的犯罪の防止であるとしている(最大判昭和25年11月22日刑集4巻11号2380頁)。具体的には「国民の射幸心を煽り、勤労の美風を損い、国民経済の影響を及ぼすから」と説明される。他人の財産を保護法益とする説もある。
賭博及び富くじに関する罪 – Wikipedia

賭博罪の成立要件

『偶然の支配』による財物の得喪

  • 直接的あるいは間接的にお金を賭けていること
  • 得喪が偶然の支配によること

囲碁・将棋なども賭博罪の成立例もありますので、オートハンデなどを適用したソフトダーツの場合はこの点については明らかに成立要件を満たしております。

相互的得失の関係

弁護士であり、麻雀プロでもある津田岳宏さんの説明が参考になります。

賭博罪は,当該行為の当事者の財物について「相互的得失の関係」の成立が要件となっている。 「相互的得失」とは,勝者が財産を得て,敗者が財産を失い,さらに勝者が得る財産と敗者が失う財産が「相互的な」関係であること,を意味する。

勝者の得る財産は,敗者が負担する財産とイコールでなければならない。

勝利によるリターンが,敗北によるリスクとイコールでなければならない。
賞金付ゲーム大会と賭博罪 | 麻雀プロ弁護士津田岳宏のブログ

簡単に言うと、参加者からお金をかき集めて、それを単純に分配するケースの場合は、賭博罪が成立する可能性が高くなります。

しかし、お店側や協賛企業が賞金を出す場合は、賭博罪は成立しません。

記憶に新しいところですと、今年から、PDCアジアンツアーが日本で開催されております。エントリー要件にプロ資格は必要ありませんが、しっかりと賞金も出ております。

PDCアジアンツアーも、日本で開催されている以上、日本国の法律が適用されます。こちらが賭博罪とならないのは、賞金の出元が違うからです。

エントリーフィーこそ必要になるものの、そこから賞金が支払われるわけではありません。
従って、相互的得失の関係にはならないため、成立要件を満たさない。つまり、賭博罪には当たらないとなるわけです。

追記)DLO(ダーツライブオープン)京都にて、ノンプロのオープンですが、賞金100万円が出る大会が開催されました。こちらも、上記の理由によりOKになった認識です。

関連投稿:

DLO 2019京都(2/17開催予定) 一般大会に賞金100万円はどのように法規制をクリアしたのか?

まとめ

  • 風営法非適用店舗の場合は風営法は考慮不要。しかし、風営法適用の場合は賞金NG。
  • 賞金10万円未満であれば景品表示法の規制は受けない。
  • 参加者からお金を集めそれを分配する場合は刑法の賭博罪が成立しうる。
  • 店舗や協賛企業が賞金を用意する場合は刑法の賭博罪は成立しない。

与太話

ハウストーナメントの賞金をWEB広告収入やクラウドファンディングで賄うのはどうだろうか?

要は、相互的得失の関係が否定されれば良いわけです。

理想は、協賛企業から賞金が支払われることです。しかし、現実問題、宣伝広告になるかどうかもわからない組織に、現金を供与するということは考えづらいです。

であれば、

店舗ごとに特定企業の商品宣伝を行い、そのアフィリエイト報酬か何かをプールし、それを賞金として集めるシステムはどうでしょうか?

あるいは、クラウドファウンディングを利用し、参加者以外から集めることでしょうか。

PERFECTのプロテストは賞金トーナメント開催のために必要

何で日本にプロテストが存在するのか

それは賞金が支払われことに対しての法的な規制があり

登録が必要なんです

このロジックは謎です。

僕の推測ですが、PERFECTの運営費用及び賞金に関しては、スポンサーからの収入が少なく、プロ登録費や施設使用料分担金が財源になっているのではないかと思います。つまり、相互的得失の関係が成立し、賭博になる可能性があるのではないかと。

おそらく、スポンサーが付き、相互的得失の関係が否定されれば、プロライセンスは不要になると思われます。(もちろん、団体運営のために、プロ制度は維持されると思いますが。。)

武器商人@ダーツ
武器商人@ダーツ

実際、テニスは、プロ制度は無いにもかかわらず賞金トーナメントを開催しているようですしね。